下請け事業者を守る下請法

2022年11月28日 0 Comments

最終更新日 2024年2月29日

下請法は、正式には「下請代金支払遅延等防止法」と呼ばれる法律です。
下請け業者に対して親事業者が、優越的な地位を利用して権利を濫用するのを防ぐための法律になります。
また、独占禁止法を補完するための法律でもあります。
独占禁止法は、公正で自由な競争を実現させるための法律です。
下請法も公正で自由な競争を実現させることを目指しており、親事業者が下請け業者に不当な取り扱いをすることを禁止しています。

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下請け法の目的

下請け業者が親事業者から委託を受け、商品を製造して納入するのは一般的に行われている取引です。
例えば、自動車メーカーでは自動車に使われる部品を下請け業者に発注し、それを元に自動車を組み立てて自動車の販売を行います。
また、化粧品会社などでも化粧品の中身は自社工場で製造するのではなく、下請け業者に製造を委託するといったこともあります。
そういった取引において、親事業者が発注した後に一方的に代金を減額することは下請け法によって規制されています。
親事業者と下請け業者は対等な関係ではありません。
親事業者に文句を言ったら、下請け業者は仕事をもらえなくなってしまう恐れがあるからです。
そのため不当な要求であっても、仕方なく受け入れてしまう状況が発生します。
そこで、下請法によって一方的な減額などは違反行為として規制が強化されました。
支払いを遅らせるといった行為も同様です。

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規制対象となる取引

下請代金支払遅延等防止法が公布されたのは、1956年のことです。
その後2003年に法律の改正が行われ、規制の対象が広がりました。
違反行為に対しては、規制が強化されたのです。
規制対象となる取引には、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託などがあります。
製造委託とは、物品を製造しているメーカーが品質や形状などを細かく指定して物品の製造を委託することをいいます。
修理委託とは、物品修理を行っている事業者がその一部を下請け業者に委託する取引になります。
情報成果物作成委託は、デザインや映像コンテンツなどの作成業務を行っている事業者がその一部を下請け業者に委託する取引です。
また、作成業務そのものを丸ごと委託する場合もあります。

業務を委託する親事業者に対する様々な義務

下請法では、業務を委託する親事業者には様々な義務が課されています。
まず、発注に際しては書面を交付する義務があります。
取引内容に関して具体的な内容を記載し、それを交付しなければならないと定められています。
記載する内容に関しても下請代金支払遅延等防止法第三条の書面の記載事項等に関する規則による決まりがあります。
それから支払い代金の支払い期日については、下請け業者と合意の上で定めなければならないとされています。
納品日から60日以内と決められているので、それを大きく超えて支払いを遅らせることはできません。
できるだけ短い期間に設定することとなっています。
もし、支払い期日までに代金を支払わなかった場合には遅延利息を支払う義務が発生します。
納品した日から60日を過ぎた日が起点となり、その日から実際に支払われた日までの期間について年14.6%の割合で利息を払わなければならないのです。
また、取引記録は2年間保存することも義務付けられています。

下請法に定められている禁止行為

それから下請法には、禁止行為も定められています。
例えば、親事業者が勝手に発注を取り消したり、納期の延期を求めたりすることは禁止になります。
発注を受けたので商品を作るための仕入れをしたのに、発注が無くなってしまったのでは下請け業者は大損をしてしまいます。
そういった事態を防ぐために、受領拒否は禁止となっているのです。
また、親事業者が不当に返品をしたり下請け代金を減額したりすることも禁止されています。
ただし、納品された商品に瑕疵があった場合には、正当な理由となるので返品することはできます。
下請け代金の減額は、原材料などが下落した場合に要求されることが多いです。
海外から輸入している原材料が円高になったことで安く仕入れられたりすることもありますが、親事業者がそれを理由に勝手に減額することは許されていません。
また、報復行為なども禁止されています。
下請け業者が親事業者から不当な扱いを受けた時に、公正取引委員会や中小企業長官などに訴え出ることは正当な権利です。
しかし、それを良く思わず親事業者が勝手に取引を打ち切ったり、取引の数を大きく減らしたりすることがあります。
こういった行為は報復行為とされるので、行うことは禁止されています。

まとめ

下請法によって是正勧告を受けた企業は多数あります。
売れ残った商品を不当に返品していたり、代金を減額させていた事例が沢山ありました。
2003年に法改正が行われるまでは親事業者に対する勧告のみでしたが、それ以降は企業名が公表されるなど規制が強化されています。
ただし、違反する企業はいまだに多く、是正勧告を受ける企業は相次いでいます。
そのため法律の周知徹底が求められます。